探し物の物語。
02
潮風にゆれる髪を押さえつけ、はひたすら大海原を行く。
時にはビキニのお姉さんや海パン男と戦闘を繰り広げることもあったが、それはにとってちっとも障害にならなかった。
は生まれてこの方12年間、グレン島以外の町へ行ったことが無い。
だから手持ちのポケモンは、12年前にグレン島まで自分を運んでくれたラプラスと、カツラのもとで兄妹のように育てられたウインディ、そしてカツラがある日突然つれて帰ってきたイーブイの3体だけ。
数は少ないが、ジムリーダーを勤めているカツラに鍛え上げられただけはある。
ラプラスは高い知能を生かしてさまざまなタイプの敵と戦えるし、ウインディの圧倒的なパワーと対等に渡り合えるポケモンは少ない。
そして三匹目のイーブイは、少し変わった特徴を持ったポケモンだった。
相手のポケモンが水なら雷、炎なら水、草なら炎といった、いくつもの技が扱えるのである。
はポケモン学者であるカツラの下で、ある程度ポケモンたちの知識を学んだが、本来のイーブイはこのような特性を持っていないはずだ。
一度そのことをカツラに尋ねてみたのだが、カツラははぐらかすだけでちゃんとした答えをくれなかった。
「そいつは特殊なんだよ。」
いつだったか、まともに返ってきた答えがソレだ。
特殊なのは誰がどう見てもわかったが、カツラが答えたくないのだと悟ったは、それ以降イーブイについて追及しなくなった。
少数精鋭という言葉が似合うパーティを引き連れたは、カツラに言われたとおりマサラタウンを目指した。
『白』という意味を持つこの町は、ポケモンの権威であるオーキド博士が住んでいる町らしい。
暇があれば尋ねてみるといいと言われたのはいいが、いざマサラタウンにたどり着いてみると、オーキド博士はちょうど留守だった。
研究所以外に珍しいものは無い町だったから、はこれといって寄り道をせずに、たくさんのポケモンがいるというトキワの森に行くことにした。
ただ一つだけ
「なんか、この町って落ち着く…。」
妙な懐かしさという心残りを遺して。
探し物の物語 2話
今までちゃんとした森というものを見たことがなかったにとって、トキワの森は暗くて不気味な雰囲気が漂う恐ろしい場所に見えた。
けれど、飛行タイプのポケモンを持っていないが先に進むには、何が何でも森を越えなくてはならない。
一人で歩くのは心細いから、ボールから出したイーブイに先を歩いてもらうことにしたのだが、お化けとかそういうものより、現実の生物がには恐怖だった。
「いやああああっ、虫っ!!虫っ!!!!」
緑のもにゅもにゅとした芋虫−キャタピー−が森のいたるところを徘徊している。
そのたびには悲鳴を上げて、イーブイにすがりついたのだった。
火山活動が盛んなグレン島に虫系のポケモンは全然居ない。
図鑑などで見るのには全然差し障りがないのに、実物の虫ポケモンは妙な恐怖を駆り立てた。
森を抜けてニビシティに着いた頃には、もイーブイも騒ぎ疲れてへとへと。
すぐさまポケモンセンターで休もうと考えたのだが
「うそ、ポケモンセンターが何者かに奇襲…?」
目の前に広がるのは、崩れた建物と散らばる瓦礫。
地面に転がったポケモンセンターの看板がなければ、その建物がポケモンセンターかどうかも判断できないような壊れかただ。
これでは泊まるどころか、ポケモンたちを休ませることも出来ない。
「ゴメンね皆。今日は野宿でもいい?」
足元にちょこんと座ったイーブイと、ボールの中のラプラスとウインディが頷こうとしたその時だ。
鮮烈な赤が、の直ぐ横を駆け抜けて行った。
肩と肩がほんの少し掠めた瞬間、鮮烈な赤がとたいして年の変わらない少年だということに気付いたが、あまりにも速いスピードだったものだから「赤」という色が強く印象に残った。
赤い帽子と服を身にまとった黒髪の少年は、と肩が触れ合ったことに「ごめん!」と一言謝ったが、そのまま振り向きもせず猛ダッシュでその場を立ち去る。
その後姿をボーっと見ることしか出来なかっただったが、イーブイがしきりに頭を足にこすりつけてくるから、そちらに視線を向けると、イーブイがモンスターボールを咥えていた。
「これ、もしかしてさっきの人の?」
「きゅう。」
イーブイがこくりと頷く。
モンスターボールの中身は、緑色の体をしたポケモンだった。
図鑑に書かれていた内容だと、確かフシギダネというポケモンだ。
フシギダネは知らない人に覗き込まれてビックリし、体を縮めている。
その姿がなんだか可哀そうで、はすぐさま先ほどすれ違った少年のあとを追いかけることにした。
「イーブイ、さっきの人の匂いを辿って!」
の指令を聞き、はじかれた様にイーブイが走り出す。
イーブイを追いかけて走ること数分。
町の外れにあるジムのような建物にたどり着いた。
どうやら少年は、このジムに入ったようだ。
「ニビジム…リーダーは岩ポケモンの使い手タケシ…かぁ。」
ジムの壁には、挑戦者募集の張り紙がしてある。
少年はリーダーのタケシに挑戦しに来たのだろう。
だとしたら、この落としたフシギダネは大切な切り札かもしれない。
はすぐさまジムに足を踏み入れた。
細い通路には人が溢れていて、通路の奥にある部屋からはにぎやかな歓声が聞こえてきていた。
部屋の中央にはリングがあり、その上でトレーナー達がポケモンを戦わせている。
今戦っているトレーナーは、さっきぶつかったあの少年だった。
少年は岩系の相手のポケモンに対し、ニョロゾで応戦している。
圧倒的に有利な戦いだが、ニョロゾは酷く衰弱しているように見えた。
おそらくポケモンセンターが破壊されたせいで、まともに回復出来ていない状態でバトルにでているのだろう。
相手のポケモンが倒れ、ワァと歓声が沸きあがる。
少年はすぐさまニョロゾをボールに仕舞うと、舞台から駆け下りた。
は人垣を掻き分けながら、少年の後を追う。
「まって!ねぇ!そこの赤い人っ!!」
赤い人、という自覚があるのだろうか。
少年はぴたりと歩みを止め、振り返る。
その顔は酷く焦っているように見えた。
おそらく少年は、フシギダネを落としたことに既に気付いているのだ。
「あのね、さっきポケモンセンターの前でぶつかったときに、この子を落とさなかった?」
フシギダネが入ったボールを差し出すと、少年の顔がパッと明るくなる。
やはりこの少年のフシギダネだったのだ。
「ごめん、フッシー。不安だったろ?本当にゴメンな…。」
からボールを受け取り、まるで数年ぶりに出会った親友に抱きつくように、ボールを胸に抱きしめる少年の目じりには、涙まで浮かんでいる。
この少年はポケモンを家族のように大切にしていることが伺えた。
さっきまで不安そうだったフシギダネの顔は、主人にあえた喜びで笑顔一杯だ。
この子が無事に主人の下に帰ることが出来てよかった。
はホッと胸を胸を撫で下ろし、少年の前から去ろうと踵を返した。
けれど、途端に腕を掴まれて引き寄せれる。
「コイツを届けてくれて本当にありがとう!!何かお礼がしたいんだ。バトルが終わるまで待っててくれないか?」
おそらく少年は無事にフシギダネと会えたことに喜びで一杯なのだろう。
興奮気味に頬を染め、じっとを見つめている。
バトルは今、中盤戦なのだという。
あと2回ほど戦えば、ジムリーダータケシと戦えるというわけだ。
あくまでそれまで勝ち続ければの話だが。
別にこれから何かをしなくてはならないわけではないし、何より「うん」と言わなければ、この手はずっと離してもらえないような気がした。
「分かった。待ってるね。」
が頷いたのを見届けて、少年は嬉しそうに微笑みながら手を離す。
「じゃあ、ちゃちゃっと倒してくるよ!!!」
少年の言葉に、このジムに通っている生徒達がにらみを利かせたが、少年は全然気付いていないようだ。
再びリングに上がり、今度はフシギダネを出して戦いはじめた少年を、はじっと観戦し続けた。
少年は宣言した通り、あっという間に勝ち進む。
そしてついに決勝戦が始ったのだが、少年が繰り出したのはピカチュウだった。
おそらくフシギダネもニョロゾも戦える力が残っていないから出したのだろう。
対してタケシのポケモンはイワーク。
岩タイプのイワークに、電気タイプのピカチュウは圧倒的に不利だ。
誰もが少年の負けを確信したバトルだった。
けれど、観客の予想を裏切り、
「勝者、マサラタウンのレッド!!!!!」
戦いの末、レフリーがリングの中央で叫んだのは、少年の名前だった。
この少年、レッドとの出会いが、のちに起こるカントー地方を揺るがす大事件にが巻き込まれるきっかけとなる。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
長くなりすぎたorz
もはや夢小説というよりただの名前変換小説って感じです。
2007/2/5