探し物の物語。
04
今朝方襲撃されたポケモンセンターは、予想以上に早く復活した。
はポケモンセンターの一室に泊まることにして、既に別の宿をとっていたレッドと別れる。
明日の昼、街の出口で会おうという約束をして。
探し物の物語 4話
は去っていくレッドの後姿が見えなくなったことを確認して、すぐさまニビジムに向かった。
ジムリーダー戦が終わったため、あれだけいた観衆は既に居ない。
「お邪魔します…。」
きぃ、と控えめにドアをひらくと、中に一人の男がいた。
ジムリーダーのタケシだ。
「ん、どうした?もう今日の試合は終わったぞ。」
可愛らしい容姿の少女が突然ジムに入ってきたのだ。
帰り支度をしていたタケシだったが、いきなり追い返すわけにもいかず、に語りかける。
「お願いがあるのです。」
「なんだ?」
「私はグレン島の。お手合わせをお願いしに参りました。」
「グレン島の…?」
はて、どこかで聞いたことがあるような…。
暫く考え込んでいたタケシだったが、ふと過去のジムリーダー集会のことを思い出した。
あれは今から3年前のこと。
集会の途中にカツラの携帯が鳴った。その電話は娘と名乗る少女からのもので、熱が出て苦しいという内容だった。
電話が切れるとすぐにカツラは慌てて集会から帰っていった。
その時初めてグレン島のジムリーダーであるカツラに娘が居ることを、他のリーダー達は知ったのだ。
「なるほど、君が娘さんか。」
「はい。いつも父がお世話になっております。」
深々と頭を下げる様子にタケシは感心した。
まだ若いだろうに、充分と躾<しつけ>がなっている。
それにしても、何故グレン島に住んでいるはずの彼女がニビシティにいるのだろう。
疑問に思うタケシに、は事情を話した。
自分の正体を知るため、旅に出たのだ、と。
「まだ若いのに、目的のために旅に出るとは素晴らしい心がけだな。」
「そんな…ただのわがままなんです。」
「いやいや、凄いと思うぞ。…それで、どうしてジム戦を?」
自分の正体を知るだけならば、何もバッジを集めなくてもいいだろうに。
タケシの思いが通じたのか、は首を振った。
「ある人に触発されたんです。私の今の実力がどれくらいなのか気になって。」
「そうか…。なら特別に、今からジムリーダー戦をしよう。」
本来なら絶対しないことなのだが、知り合いの娘であること、そしてがあまりにも可愛かったという理由でタケシは許可した。
門下生が後者の意見を聞いたら、さぞかし泣いたことだろう。
「あの人の娘さんなら、手加減はいらないだろう。」
その言葉から、昼間の試合はやはり新米トレーナーにあわせたレベルで戦っていたのだとは悟った。
バトルフィールドに移り、タケシはモンスターボールを一つだけ取り出してに見せる。
「残念ながら主力の手持ちは昼間の戦いで疲れていてな。オレはその次に強い一匹しか使わない。」
「なら私も、一匹しか使いません。」
「いい根性だ。女の子だからといっても手加減はしないぞっ!」
「望むところです!」
腕と腕がぶつかり合い、二人の手の中にあったボールが地面に向かって落ちていく。
ボン、と白い煙が開いたボールから出てくると同時に、試合は始った。
「まさか、あそこまでとは。」
タケシはさっきのバトルを思い出し、思わず呟いた。
目の前には完全に凍ってしまったゴローニャが転がっている。
「これは、カスミやお嬢に連絡しておいたほうがいいかもしれないな。」
あっという間に終わってしまったバトル。
今頃ルンルン気分で宿に向かっているだろうを頭に思い浮かべながら、タケシは仲の良い二人のジムリーダーに連絡するべくポケットを探った。
グレン島から自分の正体を知るためにやってきた。
可愛いなりをして、只者じゃない実力の持ち主だ。
「っくしゅん。」
「きゅ〜?」
「う〜ん、風邪かなぁ?」
夜道をイーブイと並んで歩く。
今まさに自分が話題になろうとしていることも知らず、彼女はのんびりとポケモンセンターに向かうのであった。
ショルダーバッグの蓋の内側に輝く、ニビジムのバッジを大事そうに押さえて。
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これからちゃんとした旅が始ります。
…始る予定です。
2007/2/19