探し物の物語。
05
ニビシティでの一戦が終わった翌日、はレッドと共にニビシティを旅立った。
次の町、ハナダシティまでの距離はそう遠くない。
時たま現れる野生ポケモンのポッポやコラッタを、レッドは訓練のためだと倒しながら前進する。
だが、道中で草原には不釣合いな巨大なポケモンを見かけて首をかしげた。
探し物の物語 5話
「何だ、あのポケモン。」
「ギャラドスだわ。」
「ギャラドス?」
「うん、コイキングから進化するきょうあくポケモン。
でも普通は海や湖に生息しているから、誰かの手持ちポケモンなのかもね。」
でなければ、こんな草原のど真ん中に水タイプのポケモンがいるはずが無い。
生まれてはじめてみるポケモンに好奇心に駆られたレッドは、ギャラドスに近寄っていった。
慌ててもそのあとを追いかけたが、なにやらギャラドスの周囲は緊張に満ちた雰囲気だ。
一人の少女が、ギャラドスを相手にヒトデマンで戦っている。
「あれ?じゃああのギャラドス、もしかして野生の?」
そんな馬鹿な。何故このような場所に野生のギャラドスが。
悩むの横で、レッドは考えるより先に駆け出していた。
少女とギャラドスの間に入り込み
「助太刀するぜ!おねえちゃん!!」
フシギダネをモンスターボールから出す。
少女はいきなりの乱入者に驚いていたが、ギャラドスが攻撃を仕掛けてこようとしているのを見て顔を青くした。
「ハイドロポンプよ、気をつけて!!!」
水系の技の中でも高い威力を誇るハイドロポンプ。
普通のポケモンがくらってしまえばひとたまりも無いだろう。
しかし、レッドは余裕な表情で事の成り行きを観察している。
「レッドのフシギダネは草タイプ。
少々のレベル差があっても、ギャラドスのハイドロポンプはダメージにならないわ。」
「その通り!」
が言ったとおり、ハイドロポンプが直撃しても、フシギダネは気持ちよさそうにしていた。
水浴び程度にしか思っていないのだろう。
今度はコチラが反撃だ、と、レッドが指令を出す。
フシギダネが背中に背負っているつぼみから、プッとタネが吹き出る。
タネはギャラドスの体に触れると、シュルシュルとツタを伸ばしてギャラドスにからみついた。
「やどりぎのたね?」
「あったりー!」
草タイプの技は水タイプのギャラドスにかなりきいている。
じわじわと体からエネルギーを吸い取られたギャラドスは、ツタによって身動きを制限され、動きが鈍くなっていく。
その隙に、少女は自分のヒトデマンに自己再生を命じた。
傷だらけだったはずのボディが綺麗に治ってゆく。
「んじゃ、最後はダブル攻撃といきますか。」
「ええ!」
会って間もないこの二人、何気に息が合っている。
二人の合体攻撃がくりだされる様子を、は邪魔にならない距離から見守っていた。
なんだか楽しそうだと思ってしまうのは不謹慎だろうか。
はもともとポケモンバトルがそれほど好きではない。
自分のポケモンが傷つくのが嫌いだからだ。
しかし、カツラに育ててもらった12年の間に、戦闘技術をこれでもかというほど仕込まれた。
その技術がどこまで通用するのか試してみたいというのも、本音である。
「でも、まだそのときじゃないよね。」
ポケモンマスターを目指して日々バトルに明け暮れるレッド。
彼がそれなりに力をつけなければ、は彼の前でモンスターボールを開くことは無いだろう。
それが彼のプライドを傷つけないための、せめてもの気遣いだった。
が物思いにふけっている間にも、レッドがモンスターボールを投げてギャラドスの捕獲に成功したようだ。
その後の二人の会話を聞くところによると、どうやらギャラドスは少女のポケモンだったらしい。
「そのギャラドス、一週間前に何者かに盗まれたの。
そして帰ったときには、さっきみたいに凶暴化していた…。
私は暴れまわるこの子を追って、自分の町からここまできたの。」
でも良かった。アンタのお陰でこの子の暴走を食い止めることが出来た。
そんな少女の言葉に、レッドは怒りをあらわにして叫んだ。
「いいもんか!!!自分のポケモンがおかしくなって平気なのかよ!?
きっとその盗んだやつがナニカしたに違いねぇ!!」
ぷんぷんと怒る姿は、なんとも熱血な男児だ。
こうやって怒るレッドの姿を始めて目にしたは、彼がただたんにポケモンを好きなだけでなく、熱血トレーナーであることを知った。
だとしたら、おそらくギャラドスをこのようにしてしまったやつ等を突き止めると言い始めるはずだ。
「よーし、このオレ様がとっちめてやる!!」
ああやっぱり。
予想通りの行動を取るレッドに、思わず苦笑してしまう。
いきり立ってどこかに行こうとするレッドの肩を掴んで、
「どこに行くの?」
「悪いヤツ等のところへ!」
「だから、その人たちはどこにいるの?」
「…えーっと…」
落ち着いて考えてみたら、犯人が誰なのか分からないし、犯人が居る場所なんてもっと分からない。
怒りのせいで前が見えなくなっていたレッドは、自分の行動恥ずかしく思った。
こんな間抜けなところをに見られてしまうなんて、なんて情けないんだ自分。
「あ、もしかしたら博士なら何か知ってるかも。」
「博士?」
「ああ。オーキド博士っていって、ポケモンの世界的権威なんだ。」
三人でポケモンセンターに向かい、備え付けのPCでオーキドとコンタクトを取る。
ちょうど博士は研究室に居たようで、すぐに出てくれた。
『おおレッド、図鑑はどうじゃ?』
「今日も新しいポケモンのデータが取れたよ。」
そう言って、レッドは懐から赤い四角のケースのようなものを取り出し、パカリとその蓋を開いた。
液晶画面に、先ほど戦ったギャラドスのデータが載っている。
にとって図鑑とは、本の図鑑だ。
だがこの図鑑は、データ図鑑なのだろう。
なんとも便利なアイテムだ。
ひとしきりオーキドのポケモン講座があった後、レッドは本題を切り出した。
「博士、実はこんなことがあったんだけど…」
『ん?』
ポケモンが盗まれて、帰ってきたら凶暴化していた。
これまでの成り行きを説明すると、オーキドは難しい顔で悩んだ後、ふと思いついたように呟く。
『ロケット団の仕業かもしれん。』
「ロケット団?」
『うむ、ポケモンを使って悪い商売をしたりしている秘密結社じゃ。
最近はポケモンの生体実験もしているらしい。』
生体実験。
なんて恐ろしいことだろう。
想像しただけでポケモンが可哀そうだ。
不意に鞄の中のモンスターボールがカタカタとゆれた気がして、はボールを手に取った。
震えていたのはイーブイのボールで、イーブイは何故か酷く怯えている。
一体何があったのだろう。
「レッド、ちょっと私外に出てくるね。」
「え?あ、うん。」
オーキド博士と話を進めるレッドたちに一旦別れを告げ、ポケモンセンターを出る。
そしてイーブイをボールから出すと、イーブイは目じりに涙をためて足にすりよってきた。
よっぽど何かが怖かったらしい。
「どうしたの?」
「きゅぅ…」
しんなりと垂れてしまった耳の裏をかきながら尋ねても、イーブイは小さく鳴くだけ。
ポケモンは人間の言葉を話さない、そして人間はポケモンの言葉を理解できない。
こういうとき、ポケモンの気持ちを読み取ることが出来たらいいのに。
小さいころからずっとそんな思いを胸に秘めていたは、イーブイを落ち着かせるために、柔らかい毛並みを撫でてやっていた。
しばらくすると、イーブイは落ち着いたようだ。
安心して眠ってしまったイーブイをボールに戻したちょうどその時、話が終わったレッドと少女がポケモンセンターから出てきた。
レッドはすぐさまに駆け寄ってきて
「、オレはオツキミ山に行く!」
「オツキミ山?」
「ああ、もしかしたらロケット団がいるかもしれないんだ!!」
鼻息荒く力説するレッドに、は頷いた。
「分かった。私も行くわ。」
「え?」
「行っちゃ駄目?」
「危ないんだ、みたいな女の子を連れて行けないよ。」
どうやらレッドの目には、が<戦えない女の子>として映っているらしい。
少々男女差別を含んだ言葉にムッとするが、そう言われるとよけいに行きたくなるものだ。
「自分の身くらい守れるから、行く。」
「でも…」
「それとも、私はレッドにとって邪魔なの…?」
寂しげにうつむくに、レッドはぎょっとした。
決して邪魔なわけではない。
ただ、岩場は女の子にとって辛いだろうし、危険な目に合わせたくないだけなのだが、こんなに寂しそうにされては…
「分かった!オレが守るから、ついてきてもいいよ。」
あっさりと折れたレッドに、は心の中で細く微笑んだ。
ぜんは急げ。
オツキミ山に向かって駆け出す二人を、どういうわけかギャラドスの主である少女が追いかけてくる。
「ちょ、何で付いて来るんだ!?」
「オツキミ山は私の町の方角なのよ!
それに、私はこう見えて水ポケモンのトレーナーなの。
岩ポケモンがいる洞窟なら力になれるはずよ!!」
あっという間にとレッドを追い抜いた少女は、ウィンクしながら叫んだ。
「私はハナダシティのカスミ!よろしくね!!」
先頭を走るカスミに負けじと、レッドもも走るスピードを速める。
目指す先に、一つ目の大きな難関が待ち受けているとも知らずに。
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ちょっと長くなりすぎた。
イーブイは何故怖がっていたのでしょうか。
2007/2/23