探し物の物語。

PREV | NEXT | INDEX

06

探し物の物語 6話








一番の年長者であるカスミは、とレッドを引き連れて猛スピードで草原を駆け抜ける。
その足のなんとも速いこと。
レッドはまだ普通に追いついていけるスピードだったが、は少し遅れ気味だった。
時々レッドが遅れ気味なのために、カスミに声をかけては怒涛の行進をストップさせる。



、大丈夫か?」
「だ、だいじょうぶっ…」



ぜいぜいと肩で息をしている姿は、どう見ても大丈夫じゃない。
今まで急ぎの用事はウインディの背に乗って目的地まで行っていたから、自身はそれ程体力が無い。
だったら今まで通りウインディに乗ればいいではないかと思うが、一人だけポケモンに頼るのはなんだか申し訳ない。
だからといってウインディの背に3人は窮屈である。
結局自分の足で走るしか手は無いのだ。
カツラはを優秀なトレーナーとして育てはしたが、ニビジムのタケシのように、己の肉体改造まではとやかく言わなかった。
何故ならカツラは頭脳派。
娘であるを筋肉ムキムキにはしたくなかったのだ。
だが、いくら頭脳派として育てられたといっても、この程度で体が思うようにならないようなら、レッドの足手まといになってしまうかもしれない。
少しくらいは持久力をつけるためのトレーニングをしたほうがいいかもしれないと思うに、レッドは手を差し伸べた。



「ほら、つかまって。」
「ありがとう。」



レッドに手を引かれながら一生懸命走るを見て、はるか前方を行くカスミは



「若いっていいわね〜。」



自分だって充分若いくせに、彼等の青春っぷりに思わず年に反したセリフを呟いた。



ようやく草原を抜けて洞くつの目前までやってきたとき、突然カスミが「伏せて!」と無理矢理レッドとの頭を生い茂る草の中に押し込んだ。
草の分け目からコッソリ覗いて見れば、洞窟の入り口に黒い服を着た怪しい集団がたむろしているではないか。
黒服のど真ん中に大きく書かれた<R>の文字。
おそらく彼等がロケット団なのだろう。
彼等は全員大人だった。
果たしてこのまま進んでよいものだろうか。
どうする?というの問いに、レッドはうきうきした表情で答える。



「このオツキミ山にはポケモンを強化するのに重要な月の石があるんだ。
 引き下がるわけにはいかねぇぜ!」



思ったとおりの返答だ。
熱血トレーナーは我先にとほふく前進を始める。
カスミとも、レッドに続いてコソコソと草の茂みを掻き分けて洞窟の入り口までたどり着いた。
見張りの男達は、案外いい加減に辺りを見回している。
3人は難なく洞窟内に入り、その暗さに驚いた。
全然辺りの様子は見えないし、かなり至近距離でなければ、隣に居る人物の顔すらも見えない。
これでは月の石を探すどころか前に進むことも困難だ。
少しでも変に動けばはぐれてしまうだろう。
はすぐ前に居るはずのカスミと手を繋ごうと思い、手を伸ばす。
どうやらカスミも握る手を探していたようで、暖かい手がギュッと握り返してきた。
暗くて落ち着かなかったが、人肌を感じると不思議と安心できる。



「レッド、どうやって進む?」
「オレに任せとけって。」



ボン、とモンスターボールが開く音がしたと思ったら、黄色くて小さな塊が出現した。
僅かに電気を帯びたボディが不機嫌そうにバチバチと光を発生している。
ピカチュウが出現しただけで僅かに場が明るくなった。
更にレッドがフラッシュを命じると、ピカチュウは嫌そうな顔をしつつも更に広範囲を照らし出すほどの光を発生させる。
その時初めて、は自分がカスミだと思って握っていた手が、実はレッドのものだということに気が付いた。
レッドは最初からの手だということを知っていたみたいだ。



、行こう。」
「う、うん。」



ピカチュウを帽子の上に乗せたレッドは、明るくなってはぐれる心配がなくなったというのに、の手を握ったまま洞窟内を探索する。
さっき草原を駆け抜けた時だってそうだが、レッドは手を握るという行為を一切気にしていない。
対しては、同年代の異性にこうやって体の一部を接触させることは、ある意味緊張する出来事だった。
今までこうやって手を引いてくれた異性といえば、父親代わりのカツラしか居ない。
生まれて初めてカツラ以外に体の一部を接触させたのは、何を隠そうレッドが初めてなのである。
草原を走っていたときは、走ることに精一杯であまり気にしていなかった。
だが、いざこうしてゆっくりと歩くとなると、つながれた手を妙に意識してしまう。



「あああ、あの、レッド」
「どうしたんだ?」
「えっと、私は大丈夫だから、その、手を」
「手が――――」



どうしたんだよ?
という言葉は声にならず、代わりに「痛っ」という苦痛にゆがんだ音声が口から飛び出した。
振り返ってを見ていたレッドは、前方に奇妙な壁があることに気が付かず、そのままぶつかってしまったのだ。
突然洞窟の行く手をさえぎった壁は確かに岩盤のように見える。
だが、岩盤にくっついた二つの瞳がギロリとたちをにらみつけたから、それがただの岩で無いことはすぐさま分かった。








++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++







中途半端な終わり方でゴメンナサイ。
オツキミ山編はあと2話あります。

2007/3/8
PREV | NEXT | INDEX