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探し物の物語。
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08
探し物の物語 8話
「ほぉ…。お姫様をお守りする騎士が二人とも意識を失っている中、どうやって後悔させるんだ?」
非力な子どものくせに。
自分ひとりでは何も出来ないだろうに。
あきらかに見くびった視線からは、そんな思いがひしひしと伝わってくる。
ナギは思わず男に平手打ちをかまそうと右手を上げた。
しかし、手の平が男の頬をぶつより早く、男はその手を容易く受け止める。
「そんなに睨むな。可愛い顔が台無しだ。」
「…気付いたらどうかしら。」
「何を気付くことがある。」
眉根を寄せて男をキッと睨みつけるナギは、まだ諦めていなかった。
その挑戦的な眼差しが男の堪忍袋にふれたのだろう。
もともと軽いナギの体は、レッドたちがもたれかかっている岩肌に軽々と投げ飛ばされた。
「あっ…!」
レッドとカスミほどではないにしろ、岩にぶつけられた衝撃が強くて息が詰まる。
ゲホゲホとむせながら地面に這いつくばるナギは、手元にあった石を握り締め、男に投げつけようとした。
けれど、ろくに起き上がれずにそのまま力を失って脱力する様子に満足した男は、最後の止めを刺すべくサイドンに命令する。
「今度は体に風穴を開けてやれ!”つのドリル”だ!!!」
しかし、男の後ろに控えているサイドンは動かない。
一体どうした。何故言うことを聞かないのだ。
男は振り向くと、固まってピクリとも動かないサイドンに腹を立ててその胴体を蹴飛ばした。
それでもサイドンは動かない。
ずっと沈黙したまま、虚像のように突っ立っている。
先ほど注入した薬の副作用だろうか。
それもと薬自体が失敗作だったのだろうか。
色々考えてみるが、どうにも理由が分からない。
もう一度蹴飛ばして、ふとある違和感に気が付いた。
本来ならゴツゴツしているはずの胴体。それがやけにつるつるしている。
「これは…?」
ひんやりとした空気が頬をかすめたそのとき、ようやく男はサイドンの体に氷の膜がはっていることに気が付いた。
「”白い霧”!!!」
少女の掛け声と共に、突如として薄暗い洞窟内に白い霧が発生する。
もともと視界が悪い洞窟内に霧が発生してしまえば、完全に周りのものが見えなくなる。
当然椥たちの姿は全く見えない。
白い霧に包まれた男は、霧をはらうためにモンスターボールからゴルバットを出した。
ゴルバットの黒い翼によって霧が吹き払われた頃には時既に遅し。
ナギもレッドもカスミも、完全に姿を消していた。
残されたのは、氷付けにされたサイドンと男、そしてその部下達だけ。
「おのれっ…次に会ったときは、容赦しない…!!」
忌々しげに歯を食いしばって怒りに体を震わす男の脳裏に、レッド、そしてナギの顔がしっかりと刻み込まれた。
「ウインディ、大丈夫?」
「ガゥッ!」
カスミとナギを背に乗せ、そして口にレッドをくわえたウインディは、なんとも走り辛そうに、けれども俊足でオツキミ山から遠ざかる。
既にハナダシティは目前に迫っていた。
「それにしても、ラプラスのお陰で助かっちゃった。」
ボールの中でのん気にうたた寝をし始めたラプラスの活躍がなければ、あの場は無事に全員で逃げることは出来なかっただろう。
洞窟内にてナギが男を右手でぶとうとしたあの時、男が右手に気を取られているうちに、こっそり左手でラプラスが入ったモンスターボールを男の背後に控えていたサイドンの後方に投げていたのだ。
そしてあらかじめ命令しておいた冷凍ビームでサイドンを凍らせたのである。
白い霧を発生させたのもラプラスだ。
その白い霧に乗じてウインディにレッドとカスミを乗せ、洞窟内を抜け出て今に至る。
「ここまで来れば、いい加減追いかけてこないでしょう。」
ナギは町の一歩手前でウインディをボールに戻し、カスミとレッドを草の上に横たえさせて、その頬を軽くはたいた。
レッドはすぐさま目を覚ましたが、腹部の痛みに小さくうめいて体を丸める。
「いってー…」
「大丈夫、レッド?」
「あ、ナギ?」
レッドの瞳がはっきりとナギを捕らえた瞬間、彼は目を見開き勢い良く跳ね起きて辺りをせわしなく見回した。
ついさっきまで岩肌に囲まれていたというのに、今は大空の下のただっぴろい草原にいるではないか。
当然さっきまで戦っていた敵はいなくて、レッドはひたすら首をかしげる。
「どうなってんだ?」
「偶然大きな石が落ちてきてね、あの人たちの行く手をさえぎってくれたの。
その隙を突いてここまで逃げてきたって訳。」
「そうだったのか。…うっ。」
サイドンの尻尾に殴られた腹が痛むのだろう。
ナギは再び痛みで体を丸めるレッドの体をさすりながら、片手で鞄の中から小さい錠剤と水筒を取り出した。
錠剤は一時的な痛み止めだ。
「これ、ひとまず飲んで。多分マシになるから。」
「サンキュ。」
あくまで痛みが「マシ」になるだけで、決して治癒効果は無い。
早急にハナダシティで体を検査してもらったほうがいい。
だが手を借りずに起き上がることは出来たから、骨と腹筋に異常は無いだろう。
心配なのは内臓だ。
「レッド、歩ける?」
「ああ、大丈夫だ。」
案外レッドは元気だった。
少し痛がりはしても、普通に立ち上がると、横に倒れているカスミの顔を覗き込んだりしている。
そのうちカスミも目を覚まし、普通に歩ける状態だったので3人そろって徒歩でハナダシティに向かった。
その道中、カスミが残念そうに呟く。
「それにしても惜しかったわね、月の石。」
オツキミ山に行ったのは、なにもロケット団と戦うためだけではなかった。
月の石を採りに行く目的もあったのだ。
そのことをすっかり忘れていたレッドも、一緒になってしょんぼりとうなだれる。
その時、ナギはふと思い出したようにポケットを探ると、丸く削れた石を取り出して二人に見せた。
「もしかして、月の石ってこれ?」
「「ああーっ!!!!!!」」
男に投げつけようと握り締めた石。
結局投げることは出来なくて、そのまま無意識の内にポケットに入れてしまったのだが、
「これよっ!これが月の石っ!!」
「やったなナギっ!大手柄じゃん!」
どうやら偶然拾ったこの石こそが、求めていた月の石だったようだ。
二人の喜びようは半端なかった。
激しく体をバシバシ叩かれ、ナギはよろめきながらも必死に二人の喜びを一身に受け止めた。
紅に染まりつつある夕日を背に、三人の影はもうじきハナダシティへと到達する。
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次はカスミ宅編
2007/3/16
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